大正１２年。
楡脳病院の院長、
楡基一郎は当選確実と思っていた
前回の衆議院選に落選。
それで政治の道は諦めるかと思いきや、
次の選挙に向けてせっせと根回し。

基一郎の長女、龍子の夫である徹吉は
念願だったドイツ留学を果たし、
異国で苦労しながら研究に没頭。

次女の聖子は親の反対を押し切って
貧しい英語教師と結婚、
勘当されてしまいます。

三女の桃子は自由恋愛を夢見ていましたが
親の決めた相手と無理やり結婚させられ
夫の赴任先の漢口に泣く泣く渡ります。

長男の欧州は何度も落第を繰り返したあげく
やっと大学の医学部に合格。

そして、その年９月、関東大震災が起きます。
楡脳病院はその地震ではたいした被害がありませんでしたが、
年末になって、賄いの火の不始末から病棟は全焼、
死者まで出してしまうのでした。

それから三年。
楡脳病院は粗末な建物で
外来のみ受けつけ、
本格的な病院の建て直しは
資金不足や付近の住民の反対などで
いまだ実現していませんでした。

次女の聖子は
夫の酒癖の悪さと転職癖に悩まされたあげく
肺結核にかかりあっけなく他界。

徹吉は帰国、
龍子は二人目の子供を産みます。

三女の桃子も里帰り出産、
念願の第一子男の子を授かります。

火災のあと、急速に老いた基一郎は
突然倒れこの世を去ります。
そしてこの年大正天皇が崩御、
時代は昭和に変わったのでした。