ディスカウントストアで
ヨガマットを手に取った俺の脳裏に蘇った
ある記憶・・

韓国は仁川（インチョン）の山奥にあるヨガ道場・・

「アボジ」（お父さん）と呼んで俺が慕っていた師匠の言葉・・
別れの朝のこと・・

「コイケや、
健全な肉体に健全な精神が宿るとは限らん・・
しかし、だらけた肉体には
だらけた精神が宿るものだ・・」

「アイゲッスムニダ！」（わかりました！）

「日本に帰ったら腹八分目を心がけ、
家では進んで家事を手伝うように・・
ゴミ出し、風呂掃除、食事の後片づけ、
犬の散歩・・やることはたくさんある・・
せめて自分の食べたものくらいは、
自分で片づけるように・・
カップラーメンくらいは
自分で作るように・・わかったな？」

「アイゲッスムニダ！」（わかりました！）

厳しい言葉と裏腹に師匠の眼は優しかった・・

「さぁ、行け、コイケよ・・
私の息子よ・・！」

「カムサハムニダ！」

・・・

師匠の言葉を胸に、
ヨガマットを抱いてレジに並んだ俺だった・・

（ふーん、それでまた、ヨガマットを買ってきたってわけね・・
何で二枚もいるかな？
マットで運動してるかな？
アボジの言葉を一個でも守ってるかな？
もう一回仁川に行ったらどうかな？）