レモンタルトの夢

イラスト、写真、お話しなどを載せています。時々根尾くん♪

「春告げ鳥」田辺聖子

碧は神戸に住む22歳のOL。
早くに両親を亡くし、姉たちと暮らしています。
碧は亡き父の友人だった笹原さんと
家族公認の恋人同士でした。


笹原さんは44歳、妻も三人の子供もいますが、
妻と子供たちは学校の関係で東京に出ており
別居状態。
笹原さんは「一番下の子供が大学を出たら
妻と離婚して碧と結婚する」と言います。


ある日、碧は笹原さんから
「二人で暮らす家を買った」と
告げられます。
その家は山の中腹にある小さな可愛い洋館で
窓からは海が眺められました。


家具や家財道具を買い集め
二人は一緒に暮らし始めます。


庭にやって来る
胸は薄黄色く、背中が黒い鳥に
碧は「春告げ鳥」という名前をつけます。
碧にはその「春告げ鳥」が
幸福の象徴のように思われるのでした。


☆☆☆


しかし二人の幸せな生活は
二か月しか続きませんでした。


ある日笹原さんは会社で倒れ、
そのまま帰らぬ人になってしまったのでした。


碧は小さなアパートで一人暮らしをはじめます。
町中では「春告げ鳥」の姿を見かけることは
ありませんでした。


(笹原さんは私に「春告げ鳥」を見せるために
私に巡り合ったのかも・・
笹原さんが恋しいと思うより
春告げ鳥が懐かしい・・)


碧はそんな風に考えるのでした。