コイケさんの旅 「ソフィアの秋」
ブルガリアの首都、ソフィア・・
枯れ葉の舞い散る石畳の道をゆっくり歩く男が一人・・
それはコイケ・・
アパートの玄関に
ひとりぼんやり立つ老婆。
老婆はコイケを見ると
驚いたような顔になった・・。
老婆はコイケに駆け寄り、
そして手を取ると
こんなことを言いだした・・。
「お前、一体どこに行っていたの・・
こんなに長い間・・どんなに心配したか・・!」
「・・・」
すると家の中から女性が出てきて
コイケに話しかけた・・
「母がすみません・・。
あなたは亡くなった兄に顔がそっくりなんです・・。
お母さん、この人は別人よ・・
ね、お兄ちゃんは・・
こんなにお腹が出てなかったでしょう・・」
「・・・」
家の中に入るふたりを
ただ黙って見送り
(何言っとるか全然わからんかったなぁ・・まぁええか・・)
そう心で呟くコイケ・・
老婆の喜びの涙に濡れた顔だけが
コイケの心に残った・・。
コイケの旅は続く・・。