秋色 平岩弓枝 下巻
世紀は戸籍上、祖母の娘になっており、
ほかに祖母が遺言を残していたこともあって
祖母が経営していた旅館の権利他
莫大な財産を相続します。
良衛は世紀の祖母から自分が作る旅館の開業資金を
融通してもらう心づもりをしていました。
しかし世紀が良衛に力を貸すとはとうてい思えませんでした。
そこで奈津美がこんなことを言い出します。
「世紀を認知してくれるのなら
私から世紀を説得してもいい・・」
奈津美自身の財産はすでに粗方旅館建設に
つぎ込んでしまっていました。
良衛は世紀を認知します。
そしてそれを菊子に話します。
菊子に隠し通すことは
不可能であると悟っていました。
「やはり世紀さんはあなたの子供だったのですね」
菊子は良衛に離婚を申し出ました。
☆
新八郎のもとに世紀から連絡があり、
会うと世紀は大学を辞め、新八郎との付き合いも
これまでにすると言います。
祖母が残した旅館を
これから自分が続けていかなければならない、
そして母が菊子の土地に建てる旅館に執着していることで
これからいろいろトラブルが起こるだろう、
新八郎に迷惑をかけられないというのがその理由でした。
世紀の意志は固く、新八郎にはなすすべがありませんでした。
なによりも世紀とどうしても結婚したいのかどうか、
自分自身の気持ちがわからなくなっていました。
つづく