くるみちゃんのお習字の先生は
おしゃれで優しい、とっても素敵な先生です。
くるみちゃんは年を取ったら
先生みたいになりたいなって思っています。

ある日のお稽古の時、
ふとくるみちゃんは先生がニットのカーディガンを
裏表に着てらっしゃることに
気がつきました。

「どうしよう、教えてさしあげたほうが
いいかしら・・」

くるみちゃんが迷っていると
ヤマモト夫人が先生にこんなことを
言い出しました。

「まぁ先生の今日のカーディガン、素敵！
ちょっと羽織らせていただいてもいいかしら？」

先生とヤマモト夫人はわりと年が近いので
いつも気安くおしゃべりしています。

「ええ、もちろん」

先生はカーディガンを脱いで
ヤマモト夫人に渡しました。

ひとしきりファッション談義をして
先生がまたカーディガンを着たときは
裏表は直っていました。

くるみちゃんはヤマモト夫人のさりげない気遣いに
感心して
お稽古のあとヤマモト夫人にそう言いました。

すると夫人は驚いた顔をして
言いました

「あら、そうだったの？
そんなこと全然気がつかなかったわ。
先生も案外粗忽ものなのね。ふふ。
ところで、くるみさんは編み物はなさるの？
私もあんなカーディガンが欲しいわ！」