かみなり 平岩弓枝
長崎の奉行所に通訳として勤める来助は、
自分がもとは米屋の倅だったのを
引け目に感じていました。
来助は自分が気に入らないことがあると
大声でがなり立てることから
来助ならぬ雷助だ、などと
陰口を叩かれる男でした。
☆
来助の長男、新之助の許嫁の梢は
母一人子一人ながら
亡くなった父親が侍でした。
それで来助も二人の縁組に
乗り気だったのですが、
梢が異国人に乱暴されるという
事件が起こります。
世間体を気にして
来助は二人を無理やり別れさせ
自棄になった梢は
異人相手の娼婦に身を落とし、
新之助と下の兄弟たちは、
来助の横暴さに反発して
家を出て行きました。
それから1年後には、
「あなたにはずっと役立たずと言われてきた。
子供たちが大村で米屋をやっていて
私に来て欲しいと言っている」と
妻も来助の元を去って行きました。