レモンタルトの夢

イラスト、写真、お話しなどを載せています。時々根尾くん♪

「自動車を待つ間」Oヘンリー

夕暮れ時、公園のベンチに腰を掛けて
本を読む若い女性が一人。


見るからに育ちの良さそうな感じのその女性を
少し離れた場所から見つめる青年がいました。


女性が取り落とした本を
青年が近づいていって拾い上げ
女性に手渡しました。


それをきっかけに
二人は言葉を交わしはじめます。


女性は青年に自分は高貴な身分だと明かします。
今は庶民のようなふりをして
こうして過ごしているのだと。


「シャンパンに入れた氷の音を聞くだけで
うんざりしますの。」


「シャンパンは瓶のまま冷やして
飲むものだと思ってましたが・・」


「まぁそうなんですけど・・
変わったこともしてみるのよ。」


女性は現在二人の男性から求婚されていると
話します。


「結婚相手は下流の男性の方がいいのかもしれないわね。」


女性は青年にどんな仕事に就いているのか尋ねます。


青年は公園の向こうにあるレストランを指し示し
「あの店で会計係をしています。」


女性は自分の腕時計をのぞき込むと
「ディナーの約束があるから
そろそろ行かなくては・・
そこに車を待たせているの。」と
立ち上がりました。


青年は女性に
「車まで送っていきましょう」と言いましたが
女性は「ナンバープレートに刻印されている
自分の名前を見られたくないの。」と
さっさとその場から歩き去っていきました。


青年は女性の後をそっとつけていき、
女性が、さっき青年が「会計係をしている」と言った
レストランに入って行き、
会計係の椅子に座るのを見届けました。


それから公園に停まっている自動車に歩いて行くと
運転手にこう告げました。


「アラン、クラブまで行ってくれ。」