俺の妻は穏やかで滅多なことでは怒らない・・
そして、我慢強く、正直で、聡明である・・
（俺はいつも漢字の読み方を
教わっている・・）。
俺には過ぎた妻だと思う・・。

俺たちは固い信頼関係で結ばれていると
俺は信じている・・（K氏とＭ子さんのように・・）

ある日、俺は妻に訊ねた・・。

「俺の古い鞄知らんか？」

「鞄？・・知らんよ・・」

妻はテレビ画面から目を離さず答える・・。
その横顔からは何も読み取れない・・

「・・・」

「・・・」

その鞄とは、昔俺が病院に行くときに使っていた
ポーチのことだ・・
もう使わない診察券が入っている・・
それに
金も多少入っていたかもしれない・・
・・・
いや、待て・・
他に何かマズイものが入っていなかったか・・
・・思い出せない・・

「あ、まぁええわ・・」

「ふーん、いいならいいけど・・」

俺は黙って部屋を出た・・

俺は妻を信じている・・
妻が「知らない」というならば、
それは本当だろう・・。