レモンタルトの夢

イラスト、写真、お話しなどを載せています。時々根尾くん♪

春秋の檻

登のいとこの娘、おちえは
毎日不良友達と遊びまわり、
叔父夫婦を心配させていました。


ある日、登が勤めに向かう途中、
人相の悪い男二人に呼び止められます。


「あんたのいとこの娘はこちらで預かっている。
牢にいる金蔵という男にこれを渡してくれ。
言うとおりにしないと
娘の命はないものと思え。」


男に渡されたのは布に包まれた小さな鋸でした。


金蔵という男は賭博で捕まって最近牢に入った男でした。
賭博はせいぜい一年程で牢を出られますが
牢破りとなれば捕まれば死罪は免れない大罪です。
そんな危険を冒そうとするには
何か裏があるに違いない・・。


登が岡っ引きの藤吉に調べを頼むと
こんな事実がわかりました。


おちえがこのところ付き合っていた新吉という男は
悪い仲間に入っていました。
その仲間のうちの何人かが昔商家に押し入り
金を奪ったうえ、一家皆殺しにしていたのです。
新吉自身はそのこと自体は知りませんでした。
押し込み強盗をしたうちのひとりの金蔵が賭博で捕まってしまい、
何かの拍子に昔のことを話すのを恐れた仲間が
新吉と付き合っているおちえのいとこが
牢医者だということを知り、
今度のことを計画したというわけでした。


登は藤吉や友人の新谷たちと
一味のあじとに乗り込み、
おちえは無事に救出されました。
泣きながら登の胸にすがろうとしたおちえの頬を
登は思い切り張ります。
一瞬きょとんとした後、おちえはより大声で泣きはじめ
登の胸にしがみつくのでした。


その様子を藤吉や他の男たちは
笑いながら眺めていました。