小さなお話(猫のくるみちゃん)
くるみちゃんのお仕事は仕立て屋さんです。
その日、くるみちゃんは仕上がったワンピースを持って
ヤマモト夫人のお宅を訪ねました。
ヤマモト夫人はお金持ちでちょっと小太りで
陽気な中年婦人です。
さっそくワンピースを着ていただきましたが
背中のファスナーが途中までしか上がりません。
「あら!くるみさん、
寸法を間違えてしまったのね!
くるみさんにしては珍しいわね!」
「・・・・」
一週間前に採寸したとき、
きちんとメモして裁断も確認してやっています。
ヤマモト夫人は一週間前より
あきらかにおなかまわりが大きくなっています。
でもくるみちゃんは黙っていました。
「すみません、作り直して、またお届けしますね」
それからくるみちゃんは寝る間も惜しんで
ヤマモト夫人のワンピースを縫って
三日後にまた夫人のお宅を訪れました。
「今度はぴったりね!
このワンピースを着ておでかけするのが楽しみだわ!」
(頑張って早く作ってよかった・・)
新しいワンピースを着て
ヤマモト夫人はニコニコ顔です。
上品なピンク色のワンピースは
ヤマモト夫人によく似合いました。
それを見てくるみちゃんもうれしくなりました。
「くるみさん、お茶でも飲んでいってくださいな。
この間とってもおいしいお菓子をたくさんいただいたのよ!
一緒に食べながらおしゃべりしましょう!」