三月のニューヨーク、
街はまだまだ寒い日が続いていました。
そんなある日、
タイピストのサラは一人暮らしの下宿で仕事をしながら
涙をこぼしていました。
去年の夏田舎で知り合い、
結婚を約束したウォルターからの手紙が
しばらく途絶えていたからです。
サラの仕事は下宿の隣にあるレストランの日替わりメニューを
タイプすることでした。
その見返りにレストランから一日三度の食事が届けられます。
夕方になり、レストランからサラの元に夕食が届けられました。
その中にタンポポの花が添えられたゆで卵がありました。
タンポポでウォルターが花冠を作ってくれた・・
サラはそんなことを思い出して
窓の外をぼんやり眺めていました。
その時、サラの部屋のドアをノックする音が聞こえました。
ドアを開けるとそこにはウォルターが立っていました。
驚くサラにウォルターはこう言いました。
「君から手紙が届かないから探しにきたんだ。
手紙に書かれていた住所に行ったら
引っ越したと聞いた・・」
「部屋を引っ越したことは手紙に書いたはずよ。」
「いやその手紙は届いてなかったんだ。」
「じゃあ、どうしてここがわかったの?」
「隣にあるレストランに入って
メニューを見たんだよ。
君のタイプライターはwが上に飛び出す癖があるよね。」
ウォルターの差し出したレストランのメニューには
こんなことが書かれていました。
「愛しいウォルターを添えたゆで卵」