元ラジオ局のプロデューサーで
現在は父親の跡を継いで酒屋を経営している鈴木は
子供なしバツ二。
ある夕暮れ、街を歩いていて、
二番目の妻だったしん子とバッタリ出会います。

しん子はフリーの人気アナウンサーで、
鈴木としん子はいわば職場結婚でした。

鈴木はしん子をてっちり屋に誘います。
二人は座敷でてっちり鍋に舌鼓を打ちながら
近況を語り合い、和やかに過ごします・・
が、話が二人が別れる原因になった出来事に及ぶと
にわかに険悪な雰囲気に・・

夫婦だった時、
お互い仕事が忙しくすれ違いが多かった二人ですが、
しん子に子供が出来ます。
しかし子宮外妊娠で子供は諦めざるを得なくなり、
しん子は実家の姫路で心身を休めることに。

しん子が留守の間、しん子の親戚の女が
大阪に出て、しん子のかわりに家事をするという
ことになります。
ただしそれは鈴木が仕事で留守の間だけ・・という
取り決めでした。

その女は全く鈴木のタイプではなく、
鈴木を信頼していたしん子は
安心していたのですが、
鈴木とその親戚の女は関係を持ってしまったのでした。
鈴木は全くの出来心だったのですが、
発覚して二人は離婚に至ったのでした。

「アタシ、帰る」
席を立とうとするしん子を
鈴木は引き止めます。

「一番うまい、最後の雑炊、食べていけへんのか」

しん子は残り少なくなってる鍋をのぞきこみ

「雑炊に釣られたか」

しん子は笑顔を見せて座り直します。

雑炊が出来上がり、
鈴木は玉杓子でしん子に雑炊を掬ってやりながら
こんな句を思い浮かべていました。

「神妙に　お縄を受けて　共暮らし」（時実新子）

お縄を受けるか・・もう一度・・
鈴木にはそれが出来そうな気がするのでした。