「初恋の人」
「あたしね、三つ違いの姉がいるのよ。」
「へぇ、そうなんですか。」
「姉は子供の頃から
家の中ではワガママだったけど、
美人でね、近所の美容院に行ったりすると
美容師さんが『おたくのお姉さんはお人形さんみたいに綺麗で
優しそうね。』なんて。」
「・・・」
「でね、学校を卒業すると
姉は隣の家のアキオくんとすぐに結婚したのよ。
アキオくんもいい男でね。
美男美女よね。
私も小さい頃からアキオくんが好きだったけど、
姉には敵わなかった。」
「でも、ヤマグチさんだってお綺麗ですよ~。
お肌だって白くてすべすべだし。」
「ふふ、ありがとう・・。
アキオくんと結婚して
姉には三人子供が出来たんだけどね、
アキオくん、女癖が悪くてね、その上
仕事も長続きしなくて・・。」
「そうなんですか・・。」
「姉も苦労したわね・・
アッと言う間に老けちゃって・・。
でも三人の子供がいい子たちで良かったわ。」
「・・・」
「私は結婚が遅かったけど、
主人はいい人で真面目だし、
待った甲斐があったって思ったわ。」
「ご主人、すごく優しいですもんね。」
「ええ、子供は出来なかったけど
主人がいてくれて、私は幸せよ・・。」
「そういえば、明日は面会日ですね。」
「・・・
・・誰が来るの?
・・アキオくん?」
「いいえ、いつもの通りご主人ですよ。
さぁ、そろそろ消灯時間だから
電気消しますね。
おやすみなさい。」
「おやすみなさい。」
老人ホームの部屋の窓の灯りが
一つ消えました。
☆☆☆
何考えてるの?