レモンタルトの夢

イラスト、写真、お話しなどを載せています。時々根尾くん♪

「威風堂々」源氏鶏太

風間京太は大阪の会社に勤めるサラリーマン。
東京出張の際の宿は決まっていました。


その宿は、
もともとは財界では
大物と言われていた人物の屋敷でしたが、


彼が急死した後、
屋敷以外にはたいして財産が
残っていないことがわかり、


残された未亡人とその一人娘の22歳の恵美子、
そして以前からいる女中の三人で
サラリーマン向けの宿屋をはじめたのでした。



京太が泊っているとき
女中の八重が思いつめたような顔で
部屋にやってきて
「付き合ってほしいところがある」と
言ってきました。



恵美子には付き合っている男がいたが
向うの家から断ってきた。
宿屋の娘など嫁にもらう事はできないと。


宿屋をはじめてはどうかと
言い出したのは八重だったので
責任を感じるところもあり、


また相手の家に対しては怒りの気持ちもありました。



八重は28歳の上州出身の大柄な娘で
「こんな大きな体ではもらってくれる人もいない」と
ずっと女中を続けるつもりでいるようでした。


気のいい娘ですが、
機嫌が悪いとドシドシと床を踏み鳴らして
うるさく歩き回るという癖がありました。



相手方の玄関先に京太を待たせ
家の中に乗り込んだ八重は
恵美子の恋人の男をコテンパンにのしてしまいます。


その男は恵美子とは別の女性との間に
子供を作っていたことがわかり
結果的に破談になって良かったということになりました。



大阪に戻った京太に
風の噂で
八重が見合いをしたという話が入ってきました。


見合い相手は農家の息子で
とても痩せているといいます。
お互いに気に入って、縁談はまとまりそうだと・・



ところが八重はなぜか、不機嫌な顔をして
ドシドシと家中を歩き回っていると
いいます。



京太には八重の気持ちがわかるような気がしていました。


八重は世間知らずの奥様と
娘の恵美子のことを心配しているのだろうと・・


できたらずっと二人の世話をしていたいと
思っているのではないだろうかと・・



(おわり)



源氏鶏太は昭和の流行作家だったそうです。
この短編は昭和20年代くらいに書かれた話です。