レモンタルトの夢

イラスト、写真、お話しなどを載せています。時々根尾くん♪

赤い蝋燭と人魚

身重の人魚は考えました。
「人間は魚たちより優しいと聞いた。
この子は海で育つより幸せになるだろう・・」


老夫婦に拾われて大事に育てられた人魚の娘は
大きくなると蝋燭に絵を描き始めます。
その蝋燭は海のお守りとして
飛ぶように売れました。


ところがある日、
老夫婦は訪ねてきた南方の香具師に言いくるめられ
欲に目がくらんで娘を売り飛ばすことにしたのです。


娘は描きかけの蝋燭の絵を
真っ赤に塗りつぶし
香具師に連れていかれたのでした。


ある日ひとりの女が老夫婦から
娘の残した真っ赤な蝋燭を全部買っていきました。
あとで見るとお金は貝殻でした。


その晩、海は大荒れになり
「南に向かう船も助かるまい・・」と
老夫婦はおののき、
そのまま蝋燭屋をたたみました。


山の上のお宮さんに蝋燭の明かりが見えると
海が荒れ人が溺れる・・そんな話が広まり
ふもとの町は数年のうちに
滅びてしまいました。


☆☆☆
この老夫婦はもともと強欲だったわけではなくて
信心深く、その日一日無事に暮らせることに
感謝しているような夫婦だったのに、
育てた娘が絵を描いた蝋燭が売れて
多少の贅沢を覚えてしまったのかなと
思います。
そうすると人はもっともっと・・と
欲が出てきてしまうものなのかも・・
娘は恩返しのつもりで
一生懸命蝋燭に絵を描いていたのに
皮肉で悲しい結末だと思います。