読んだ小説

ネタばれあります。


「万祝」 


養母である叔母と暮らすお梶は
16の時に船積問屋の長男と祝言をあげます。


舅姑には大事にされるも、
亭主は女遊びの激しい男で
別宅に妾を囲って娘を二人も作る始末。
それでも跡取りとなる男の子をひとり産んで
お梶は辛抱を重ねました。


ある年、亭主は妾と娘たちを連れて舟遊びに出ましたが
大波で船がひっくり返り、
亭主も妾も娘たちも皆死んでしまいます。


船積問屋の女主になったお梶を
陰日向になって支えたのは
死んだ亭主の知り合いだった
河岸問屋の次男坊、竹二郎でした。



月日が経って四十の坂を越えたお梶は
重い病の床につきました。
自分の命が長くないと悟ったお梶は
息子の嫁を呼んで
引き出しから大事にしまってあった長半纏を出してくるように
言いつけます。


そして
「心底好き合った人が、別れる時に
来世では一緒になろうと言ってくれた、この祝半纏を
自分のお棺の上にかけて欲しい」と
頼みました。


その祝半纏は「万祝」と呼ばれ、
房総あたりの漁師が大漁祝いの引き出物に
配るものでした。


「死んだお義父さんの話はうちの人から聞いてます。
きっとお義母さんの言うとおりにしてもらいますから」


お梶が亡くなった時、話を聞いた息子は
一晩考えた末、母親の望み通りにしてやることに
したのでした。


大漁に沸く浜の喜びと
活気が伝わるような祝い着に包まれて
お梶は旅立っていきました。



(「万祝」杉本章子)