続き
ある晩、若者の家の戸を叩くものがありました。
旅姿の若い娘で、
荷物を全部盗られて困っている。
一晩でいいから泊めてもらえないか。
と言います。
若者と母親は快く娘を泊めてやりました。
あくる朝、娘がお礼に油揚げを作ってごちそうしたいと
言いだしました。
娘が作った油揚げはたいそうおいしく、
若者はこの油揚げを売って
娘の旅のお金を作ってはどうかと
思いつきました。
それから娘と若者と母親で
油揚げを作り
売り歩く毎日が続きました。
娘の油揚げはよく売れ
しばらくすると娘の旅費くらいは
たまってきましたが、
娘は旅立ちを言い出しませんでした。
母親と若者は気立てのよい娘に
ずっと家にいてほしいと思うようになりました。
ある日のこと、
娘が油揚げを揚げていると
油がはねて娘の手にかかりました。
「きゃん!」
見ると娘の姿は一匹の狐に変わっていました。
若者と母親が呆気に取られている間に
狐は家から走り出て山の方へ去って行ってしまいました。
若者と母親はそれからも油揚げを作って売り
おかげで暮らしに困ることはなくなりました。
ただ夜若者が外に出ると
山の方から狐の鳴き声が聞こえることがあったそうです。
それはあの狐の娘が若者と母親を恋しがって
鳴いていたのかもしれません。
おわり