レモンタルトの夢

イラスト、写真、お話しなどを載せています。時々根尾くん♪

続き

ある晩、若者の家の戸を叩くものがありました。
旅姿の若い娘で、
荷物を全部盗られて困っている。
一晩でいいから泊めてもらえないか。
と言います。


若者と母親は快く娘を泊めてやりました。


あくる朝、娘がお礼に油揚げを作ってごちそうしたいと
言いだしました。


娘が作った油揚げはたいそうおいしく、
若者はこの油揚げを売って
娘の旅のお金を作ってはどうかと
思いつきました。


それから娘と若者と母親で
油揚げを作り
売り歩く毎日が続きました。


娘の油揚げはよく売れ
しばらくすると娘の旅費くらいは
たまってきましたが、
娘は旅立ちを言い出しませんでした。


母親と若者は気立てのよい娘に
ずっと家にいてほしいと思うようになりました。


ある日のこと、
娘が油揚げを揚げていると
油がはねて娘の手にかかりました。


「きゃん!」


見ると娘の姿は一匹の狐に変わっていました。


若者と母親が呆気に取られている間に
狐は家から走り出て山の方へ去って行ってしまいました。


若者と母親はそれからも油揚げを作って売り
おかげで暮らしに困ることはなくなりました。


ただ夜若者が外に出ると
山の方から狐の鳴き声が聞こえることがあったそうです。


それはあの狐の娘が若者と母親を恋しがって
鳴いていたのかもしれません。


おわり