人魚姫 その四
王子の結婚を知った人魚姫は
痛む足を引き摺って浜辺にやってきました。
人魚姫が悲しみにくれていると
そこに5人の姉たちが
姿を現したのです。
姉たちの長く美しい髪は
プッツリと短く切られていました。
姉のひとりが言いました。
「私たちの髪と引き換えに
魔女からこの短剣を貰って来ましたよ」
そして
「王子の流した血であなたは元の姿に戻って
海に帰ることができるのです。」
人魚姫は姉から短剣を受け取ると城に戻り
王子の寝室に入って行きました。
短剣を手に、人魚姫は王子の寝顔を見つめました。
王子は穏やかな寝息をたてて眠っています。
王子の頬に涙を一粒こぼすと
人魚姫は王子のそばから離れました。
海に身を投げた人魚姫は
沢山の小さな泡になりましたが、
そのまま消えず、
いつしか風の精に生まれ変わっていました。
(まだ続きます)
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いわさきちひろさんの絵本「人魚姫」