「峠のきつね」その一
「峠のきつね」その一
昔、みまさかの国のある山の峠に
一軒の茶店がありました。
店の主人はきへいさんという人でした。
ある日、はかまに刀を二本さした
立派な身なりのさむらいが
店に入ってきました。
「いらっしゃいませ。おつかれさまでございます」
そういってきへいさんがさむらいの見てみると
さむらいの顔は毛がはえてとんがっており
頭には大きな三角の耳がつんと突っ立っていました。
(ははぁ、いたずらきつねめ。
あれでうまく化けたつもりでいるんだな。
ひとつからかってやるとするか)
きへいさんはそう思って
「さぁ、どうぞどうぞおかけになって
ゆっくり休んでいってください」と
きつねのさむらいに丁寧に言いました。
つづく
得意げです。