ずいてんさん (イラスト追加しました。)
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「ずいてんさん」
昔山の中の寺に和尚さんとずいてんという小僧が
二人で暮らしていました。
ある日和尚さんは用事で出かけ、
ずいてんさんはひとりで留守番をすることに
なりました。
ずいてんさんはひとりでおつとめをはじめました。
しばらくすると、
「ずいてんさん、ずいてんさん」と呼ぶ声がします。
ずいてんさんが表に出てみると
誰もいません。
それでずいてんさんが仏さまの前に戻ると
仏さまが二体になっています。
「ははぁ、これはどちらかキツネが化けたものだな」と
思い大きな声で
「本物の仏さまはお経をあげると赤い舌を出す」と言いました。
ずいてんさんがお経をはじめると
キツネが化けたほうの仏さまが赤い舌を出しました。
ずいてんさんはキツネの仏さまを
大きな鍋に入れて出られないようにふたをし、
かまどの火を起こし始めました。
そこへ和尚さんが戻ってきました。
見るとずいてんさんはかまどの前で真っ赤になって
火ではなく唐辛子をふいています。
「ずいてんや、きつねにばかされておるぞ」
和尚さんが鍋のふたを開けてやると
キツネが飛びだし、
一目散に山に向かって逃げて行きました。
その夜、ずいてんさんがお寺の外に出ると
どこからかキツネの声が聞こえました。
「ずいてんさん、今日はおもしろかったねぇ」