おこう 四
おこうは鳥越の源太郎を
訪ねることにしました。
男の住まいを一人で訪ねるなど
おこうにとっては一大決心のいる
ことでした。
あちこち聞きまわって
ようやく探し当てた
源太郎のいる木賃宿は
ひどく粗末なところでした。
源太郎はおこうを見て
ひどく驚きました。
☆☆☆
源太郎はおこうを近くのそば屋に
連れて行きました。
二階の部屋に腰を落ち着けると、
おこうは源太郎に見合いのことを
話しました。
冗談めかして話そうとしましたが
涙がこぼれます。
「おこうちゃんは子供時分から
器量も気立ても良くて
年頃になったら
どんな男がおこうちゃんを射止めるか
よるとさわると噂になってた…」
源太郎はおこうの粗末な髪の飾りや
古びた着物に気がつきました。
源太郎は江戸に出て来てから
何度かおこうの家の近くまで行っており、
源太郎は贅沢ななりをした
姉のおくにも見かけていました。
おこうは着物の袂から手毬を取り出し
それを源太郎に買ってもらったときのことを話しました。
「俺はずっとおこうちゃんが好きだった」
二人はようやく互いの気持ちを
確かめあったのでした。