おこう 二
子供だったおこうは、優しい源太郎に幼い恋心をいだき、
源太郎が買ってくれた小さな手毬を、ずっと大切にしていたのです。
☆☆☆
8年前、もらい火で源太郎の家は焼け、
両親と源太郎は田舎に引っ越して行きました。
源太郎の両親はそれから相次いで亡くなり、
源太郎は江戸に戻って下駄屋に奉公していましたが、
今は浅草の鳥越にある木賃宿にいて、回り灯籠を売って暮らしを立てていると言います。
一人息子の源太郎は本当なら下駄屋の若旦那になっているはずでした。
話を聞いておこうは心を痛めるのでした。
おきよの家からおこうにすぐ戻って来るようにと使いの者が来て、
おこうは
「後でまた来るから」と源太郎に言い残し、おきよの家に戻りました。