遺り櫛 二
志津が江戸に戻ったあと、
不正は明るみ出て
止むを得ず不正に関わっただけの元夫も職を追われ
京からも追放され
病気で亡くなるまで
折枝と暮らしていたといいます。
志津が折枝から差し出された包みを開くと
元夫の遺髪と志津が愛用していた櫛が出てきました。
折枝は
「私は最期まであの方のそばにおりました。
あの方はあなたさまを恨むことなく
その櫛を大切に
持っておられた。
あなたさまを愛おしく思っておられたのです。
あなたさまが裏切らなければ
あの方は死なずにすんだのです」
志津は折枝を嘲るような目で見ると
こう話し出しました。
つづく