遺り櫛
二十歳を過ぎても
縁づいていなかった志津は、
伯父から京のある役人の男の元に
嫁ぐように言われます。
その男はある不正に関わっていると
思われていて
志津の役目はそれを探ることでした。
結婚してしばらくすると
志津は夫から不正の証拠となる事柄を聞き出し、伯父に知らせると
病気を理由に江戸に戻り、
そのまま離縁してしまいます。
それから
志津の伯父は大いに昇進し
志津は毎月伯父から運ばれてくる多額の金で
贅沢三昧の暮らしをしていました。
志津が三十をすぎた頃、
京から一人の女が志津を訪ねて来ます。
折枝というその女の顔は
志津には忘れられない顔でした。
続く