昔話「あちらを向くか」

「あちらを向くか」


むかしむかし、ある殿さまは鯛の焼き物をたいそう好まれ、
毎朝御膳にはお頭つきの鯛が出されておりました。
  
ところがあるとき、鯛の不漁が続き、
町の魚屋では鯛の姿が消えてしまいました。
料理番は町中をくまなくさがして、
やっとのことで一枚の鯛を手に入れることができました。
 
「もう一枚の鯛もござりませぬ。
千両出しても手に入りますまい」
  
料理番は殿さまの御近習(おそばに仕える人)に
こう伝えておきました。
  
さっそく、朝の御膳に鯛の焼きものを出すと、
殿さまはきげんよく鯛の片身を召しあがられ
「うん、うまいうまい、鯛の替わりをもて」と
仰せつけらました。
  
さてさて御近習はうろたえ、
どう申し上げればよいものかと思案しておった最中のこと、
殿さまがふとあちらを向かれたすきに
さっと御膳の鯛を裏返したのです。


 すると、殿さまは御膳に目をやり、
その鯛の片身も召しあがられました。
そしてまたまた「これはうまい、替わりをもて」と
仰せつけらました。
  
 これには御近習、どうしようもなく途方にくれていると、
殿さまはにっこりとお笑いになり
「わしがまた、あちら向けばよいか?」と
おっしゃったということです。
  
殿さまは、すべてわかっておられたのです。
それにしても、心の広い殿さまでありました。


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「赤毛のアン」の表紙コレクション その一


「あしながおじさん」の次はやっぱり「赤毛のアン」・・
ということで。


六枚です。