彦一ばなし(朝顔)その四
それもそのはず、
縁先の棚に並べられた、百鉢ほどの朝顔が
パッと見事に、
美しい大輪の花を咲かせているでは
ありませんか。
赤い花、青い花、紫の花、
色とりどりの素晴らしい立派な花です。
それをご覧になった殿さまは
「彦一、見事、見事。
あっぱれじゃ。
だが、まさかこの花は作り物では
あるまいな」
と念を押されたほどです。
「皆、咲きたての本物の花で
ございます」
「そうか、でも不思議でならぬ。
彦一、どうやって今まで
花をもたせたのじゃ。
朝顔は朝早く花開き、
じきにしぼんでしまうものだが」
「お殿様、それは簡単なことでございます。
ちょっと朝顔を騙しただけです。」
「何、朝顔を騙したとな。」
殿さまは不思議そうな顔でお尋ねになりました。