「彦一ばなし」　その二

借金取りはビックリ仰天して
「そりゃ気の毒なことだったな。
まぁこれは香典だと思って・・」と
女房にお金を渡すとそそくさと
帰って行きました。

彦一と女房は
借金取りが「香典だ」と言って置いていったお金で
正月の餅やら酒やらを買って
楽しい正月を過ごしました。

それからしばらくした頃
彦一が道を歩いていると
向こうから例の借金取りが歩いてきます。

「さぁ、どうしたもんか」
彦一はちょっと考え、
そのまま真っ直ぐ歩き続けました。

そのうち借金取りの方も彦一に気がつきました。

借金取りは驚いて
「なんだ彦一、おまえ死んだはずじゃないか？！」と
言いました。

彦一はにこにこしながら借金取りの前まで
歩いてくると
涼しい顔でこう答えました。

「ええ、そうですよ。
ですが、時々世話になった皆が
元気かどうか気になって
こうして戻ってきてるんですよ。
成仏できずに困っています。」

これには借金取りも呆れて
怒る気にもならなかったということです。

（おわり）

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箱根の「星の王子様ミュージアム」