「聖衣」(2)
「聖衣」(2)
「会えて嬉しいよ」トムはちょっとぎこちない調子で
ジョニーに話しかけました。
「おいおい、
君たちに献金皿をまわすようなことは
しないから大丈夫だよ。
それよりランスロット、君の着ているチョッキは
最新の型のようだな。
ニューヨークではそんなのが今流行ってるのか?」
「君は前と変わらないな」
ランスロットは嬉しそうに言いました。
「なぁジョニー、
そんなバスローブみたいなもの脱いじまって
僕等と一緒にニューヨークに帰らないか。
君が帰ればみんなどんなに喜ぶか。
こんな冷蔵庫みたいなところから出るんだよ。」
そう言うトムに
ジョニーは穏やかな顔でこう答えました。
「そんな風に言ってもらえて
嬉しいよ、トム。
でも以前の生活に戻るつもりはないんだ。
ここで僕は理想の生活をしているんだよ。」
そして自分の着ている衣を
愛おしそうに撫ぜると言いました。
「僕はやっと膝小僧のでない服を見つけたんだよ。
服のしわを気にすることもない。
平和の衣を見つけたんだ。
僕は一生ここにいるつもりだよ。」
(O・ヘンリー「聖衣」より)
おわり
***
1月29日の誕生花
辛夷(花言葉は「友情」「信頼」)