鼻ききまごべえ その二


「鼻ききまごべえ」 その二


さて、その年の暮れのこと、
まごべえは勤めているお店の旦那さんについて
舟で京に上ることになりました。


まごべえは出かける前におかみさんに
こう言いました。


「明けて正月の15日に帰ってくる。
その前に、この古い家に火をつけて
すっかり焼いておくんだ。
きっとだぞ。わかったな。」


おかみさんはまごべえの言うことにうなずいて
約束しました。


やがてまごべえと旦那さんが乗った帰りの舟が
舟道の中ごろに出た頃、
まごべえは鼻をフンフン鳴らして
旦那さんにこう言いました。


「旦那さま、えらいことです。
わたしの家が火事で焼けております。」


「バカを言え、
五十里も先のことが分かるはずあるまい。」


「でもにおいがするのですよ。」


旦那さんは笑いながら
「もしお前の家が焼けておったら
わしの店と家を全部お前にやるとしよう。」


「きっと約束ですよ。」


舟が町に着くと
まごべえを迎えに来たおかみさんが
「家が火事ですっかり焼けました」と。


旦那さんがまごべえについて
家に行くと、
おかみさんの言うとおり
家はすっかり焼けておりました。


旦那さんは仕方なくまごべえに
家と店をやらなくてはなりませんでした。


つづく