竜宮の椀
竜宮の椀
昔、ある砂丘のそばに村があり、
砂丘の下には竜宮があると伝えられていました。
ある年村のお寺で報恩講の用意をしていて
10人分お椀が足らないことが
わかりました。
困ったお寺の奥さんは
竜宮の乙姫様にお椀を貸して下さいと手紙を書いて
砂丘の松の根元に置いておきました。
翌朝行ってみるとそれは美しいお椀が10個、
松の根元に置かれていました。
奥さんはありがたくそのお椀を使わせてもらいました。
そして報恩講が終わると奥さんはお椀を松の根元に
返しておきました。
それから毎年報恩講の前になると
松の根元には10人分のお椀が置かれていました。
ある年お寺の奥さんがお椀を返そうと思ったら
ひとつ見当たりません。
しかたなく、よく似たお椀を買ってきて
借りた他のお椀に加えて
松の根元に返しておいたのです。
奥さんがよく朝恐る恐る松の根元に行ってみると
買ったお椀だけそこに転がっていました。
次の年からは竜宮のお椀が松の根元に置いてあることは
なくなってしまったということです。